連立参加に際して

今回は社民党を支持する方に読んでいただきたいという思いで書いてみました。
社民党は、貧困問題への取り組みを通じて「護憲」「平和」を実現してほしい、ということを主張したいと思います。


社民は連立を組むことを前提に選挙を戦ってきました。
民主党にはやっかいな存在」(東京新聞)となることは、選挙前から十分予測されていたことであり、
自民党やメディアの格好の攻撃材料でもありました。


連立 社民の出方焦点 社民 独自色発揮に躍起 民主 政策決定遅れ懸念(東京新聞、2009年9月3日)


 二日に始まった民主、社民、国民新三党の連立協議の一つの焦点は社民党の出方だ。連立政権に加わりたいのはやまやまだが、民主党の言いなりにはなりたくないのが社民党の本音。社民党があまり強気に出てくるようなら、船出からぎくしゃくしかねず、民主党にはやっかいな存在だ。無論、両党は連立協議をご破算にするつもりはなく、ともに微妙なさじ加減が求められている。
(略)
 連立協議に先立って二日に行われた党の全国代表者会議では、「連立政権に入れば、社民党の政策が骨抜きにされてしまうか、埋没するかのどちらかだ」、「社民党の意見が通らないのであれば、連立に参加すべきではない」といった意見が続出した。執行部には連立参画を取りやめる選択肢がないのに対し、地方には慎重論がある。


私は、社民はあえて「やっかいな存在」たるべく自らをアピールしてきたのだと考えていますし、
閣内協力し、かつしたたかさを失わず社民政策を最大限実現して欲しいと期待しています。


そもそも、立場や考え方の違いを踏まえながら、
議論や説得、妥協や調整にかかる「やっかいさ」を真摯に追及し着地点を模索することが、
民主主義の本来的な姿であり、
数の論理だけで押し切ってきた自公政治に慣れきってしまった私たちは、
これからはそのようなやっかいさを回避すべきでない、と考えます。


とはいえ、私は(そして私たちの世代は)どのような期待を、社民党に受け止めて欲しいのか。


連立ではなく閣外協力とすれば、独自路線の修正は不要であり、
共産党の「建設的野党」と同様、是々非々の態度で臨んで行くという考え方は確かにあるでしょう。
社民党の地方組織が「骨抜き」を最も恐れているのは「護憲」「平和」にほかなりません。


私も以前別の記事*1で書いたように、
人間と環境を徹底的に破壊する戦争こそ最大の惨めさであり、
政治の役割はそれを回避することにあると考えます。
そしてそれが可能なのは社会民主主義を標榜する社民党ではないかと。


しかし、私は一方でこうも思っています。
特に私たちの世代にとっては、もうすでに「貧困」によって、
「護憲」「平和」は骨抜きになりかけているのではないかと。
「護憲」「平和」はその足元をもうすでに掘り崩されているのではないかと。


ここで私は「貧困」という言葉で、現に存在する(絶対的もしくは相対的)貧困の他、
労働・雇用政策、社会保障政策、そして、教育政策のゆがみや綻びによって、
生活の展望が描けず、先が見えないと感ずる人々の不安や希望のないこの国の状況を指し示したいと思います。


貧困問題の解決に最大のプライオリティーを付し早急な取り組みを開始しない限り、
いくら「平和」「護憲」を声高に訴えたところで、その価値はますます衰退するしかないのではないでしょうか?


それはなぜか。
以前にも赤木智弘さんの論考に即して書いたことがあります*2が、
私たちの時代において、
何がこの国を戦争をできる国へと向かわせ、
平和憲法の価値を衰退させているのか、を良く考えて見る必要があります。


それは、例えば北朝鮮の脅威や、それを煽るメディアや政治のせいなのでしょうか。


私はそうは思いません。
貧困状態にある私たちの不安や絶望が、戦争を無意識に希求しているのではないでしょうか?
「平和を守る」ということが、この不安や絶望が織り込まれた現状を肯定することであるならば、
そんな平和なら願い下げだということになるのではないでしょうか。
安定した雇用があり、先が見える社会保障があり、子ども達の思いをくじくことのない教育があること。
こういったことがなければ、平和の尊さといわれても何のリアリティもないのが私たちの世代の実感ではないでしょうか。


むろん、戦争の実態や悲惨を経験(身をもって体験したということにとどまるものではありません)した方々にとって、
平和こそが最も大切であるとは自明のことです。
しかし、戦争の実態や悲惨を経験した世代は今後ますます少なるにつれ、
今後「平和」「護憲」の価値はますます弱まるでしょう。
私たちはまずもって日々の暮らしの展望や希望のなさに苦しんでいるのですから。


だから、社民党にはこう訴えて欲しいのです。
祈りや呪文のように「平和」「護憲」を唱えていても、「平和」「護憲」は決して守られない。
私たちは、貧困問題の解決を通じて「護憲」「平和」を真に実現したいと。
社民党こそ貧困問題に取り組める*3のだと。

*1:「政治の役割とは」、http://d.hatena.ne.jp/rakudat/20090818/1250524750

*2:平和を語るときに。本田ゆみさんのこと。http://d.hatena.ne.jp/rakudat/20090816/1250361699

*3:「貧困問題に取り組める党はどこか?http://d.hatena.ne.jp/rakudat/20090815/1250356279